世界農業遺産「静岡の茶草場農法」(静岡県掛川市)

公開日 : 2018年05月22日
最終更新 :
100メートルを超える茶文字
100メートルを超える茶文字

社会や環境に適応しながら何世代にもわたり発達し、形づくられてきた農業上の土地利用。伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化、景観、生物多様性に富んだ、世界的に重要な地域を次世代へ継承することを目的に、国連食糧農業機関(FAO)が2002年から開始したプログラム「世界農業遺産(GIAHS: Globally Important Agricultural Heritage Systems、ジアス)」があります。静岡県掛川市の「静岡の茶草場農法」を紹介します。

100メートルを超える「茶」の文字と伝統的な茶摘衣装

100メートルを超える「茶」の文字と伝統的な茶摘衣装
伝統的な茶摘衣装「かすり」

「茶文字」は、「茶草場農法」の中心地となる掛川市の東山地区のシンボルです。標高532mの粟ヶ岳に100mを超える「茶」の文字が見えます。

ところで、茶草場農法とは、刈り取った草を茶畑に入れる農法です。より高品質なお茶を生産しようとする農家の方々の努力が結果的に環境や生物を守ることにつながり、このような自然豊かな景観を育んで来ました。そこには、希少種を含む多くの草地性の植物を身近に見ることができます。

農業と生物多様性が同じ方向を向いて両立していることが世界から評価され、世界農業遺産に認定されました。

また、茶摘の時期には、「かすり」と呼ばれる着物に黄色の「たすき」を身につけた伝統的な茶摘衣装の姿を見ることができます。現在は機械による茶摘が主流となっており、手摘みは随分減ってきました。ただし、早い時期の新茶を摘む茶園では、その様子を見ることが出来ます。人の手により丁寧に摘まれた「一芯二葉」の新芽は、高品質なお茶にある強い旨みとさわやかな苦味を感じることが出来るでしょう。

蒸気機関車と美しい茶園の風景

蒸気機関車と美しい茶園の風景
蒸気機関車と美しい茶園

茶草場農法の認定地域がある大井川流域は、古くから上質な茶が生産されています。大井川鐵道は、茶草場農法が行われている地域を縦断しており、現在でも地域住民の足として欠かせない存在です。

蒸気機関車も運行されていて、自然豊かな景観をゆっくりと楽しみながら巡ることが出来ます。「蒸気機関車と美しい茶園」という地域特有の景観を車窓から楽しめるでしょう。

伝統的な「手もみ」による製茶

伝統的な「手もみ」による製茶
伝統的な「手もみ」による製茶

伝統的な「手もみ」による製茶が行われています。その卓越された技術から生み出されるお茶は、ひとつひとつが針のように細く長く作られます。その美しく作られた茶は、まさに芸術品です。

茶草場農法の認定地域では、3つの流派があります。各地域の特色ある製茶法を残していくため、保存会をつくり次世代への継承を図っています。

「東山いっぷく処」の茶饅頭

「東山いっぷく処」の茶饅頭
茶まんじゅう

エメラルドグリーンの緑茶とその味を一層引き立てる茶饅頭もオススメです。深く繊細な味が茶園の風景を思い起こさせます。

静岡の茶を原料とした茶饅頭は、茶草場の中心地のお休み処「東山いっぷく処」の名物です。どこか懐かしく、ほろ苦い蒸かしたての茶饅頭を食べながらその地で育った茶を飲む・・・。その地でしか味わえないひと時を楽しみましょう。

茶草場がある棚田の風景

茶草場がある棚田の風景
倉沢の里に光あふれて

菊川市「せんがまち」の棚田は、400年前から開田が始まり、千枚の田んぼという意味で「せんがまち」と名づけられました。

最盛期には3千枚以上の枚数がありましたが、消滅の危機に瀕していて、田んぼの畦は茶草場として活用されていました。そのため棚田オーナー制度による棚田の再性のとりくみが行われ、多くのイベントも開催されています。

毎年6月上旬にこの棚田で田植え後に行われるイベント「あぜ道アート」は、あぜ道に約1,300本ものロウソクの炎がゆらめき、幻想的な雰囲気を演出します。先人たちが遺してくれた伝統的な棚田の風景と、現代の人々の思いが生んだ芸術的な景観です。


■掛川市役所 環境経済部 お茶振興課
世界農業遺産「静岡の茶草場農法」推進協議会
・住所:〒436-8650 静岡県掛川市長谷一丁目1番地の1
・URL: http://kakegawa-kankou.com/chagusaba/

※本記事は、「日本の歩き方」内、「おでかけガイド」に2015年12月17日に掲載されたものです。

筆者

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