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井筒和幸監督、かく語りき。

「岸和田少年愚連隊」「のど自慢」「パッチギ!」「ヒーローショー」…
数々の名作・話題作を世の中に送り出してきた映画監督・井筒和幸。
映画撮影やテレビ番組の出演で、日本各地を歩いてきた井筒監督が語る、
映画のロケ地のこと、東日本大震災を経ての現在のこと…
「日本の歩き方」のスペシャルインタビューをお楽しみください。



今年3月11日の14時46分、東北地方太平洋沖地震(後に東日本大震災と命名)が発生したときは、井筒監督はどうされていたんですか?

3月11日のあのときは、自宅にいましたよ。だんだん揺れが大きくなって、外に出ました。「これは、やばい」ってね。穏やかな住宅街の広めの一通の道なんやけどね、近所の人もみんな外に出てた。「なんだー、このニッポンは?」って。それから家の中に戻って、テレビ付けたらニュースで津波がぐおーって来てて。家も田畑も走っている車も津波に飲み込まれる映像を見せつけられたよね。 僕はこういう仕事をしてるから、映画のロケハンとかテレビ番組とかで、結構えげつない場所に行って、自然の脅威みたいなものをよく見て、「うわー、マグマがこんな出ててんのかよ」とか、「この、東京の倍の面積もある、でっかい氷河は何なんだ?」とか、絶句するわけ。 でも、ああいう本物の津波は映像でも初めて見たな。ヘリコプターのカメラが上から撮っていても、あの凶暴さ、凄さは十分に分かったし。


テレビ出演も多い井筒監督ですが、震災直後に番組に現れる政治家たちや会見を繰り返す原発事故の企業関係者をどういう思いで見ていましたか?

井筒監督

「何やったんだ、こいつら…」って思いながらも、「まぁ、誰がやってもそんなもんかな」って見てたよ。そう簡単に物事が一気に回復して整理整頓できるわけがない。頭で思ったとおりにはいかない。あんな塊(津波)がやってきた日には、誰でも混乱する。そりゃあ、動植物の方が立ち直りが早いわ。物事を考えないからね。タンポポはすぐ育つし、毛虫はただ黙って木に登っていくでしょ。流された木にだって、また登っていくから。人間はそうじゃなくて、考えて行動して、いろんなものをまたゼロから創っていかなきゃいかんからね。 結局は、政治する人も弱いね、普通の庶民の方がずっと強いね、すぐに誰かが何かを出来るわけないですよ。そんな気持ちでニュースを見てました。別に怒ることもなく、ね。ただ、原発の行方は気が気でならず、寝ても覚めても一時間おきに見てたけど。


映画というメディアを創る井筒監督は、震災が起きた後、ご自分の職業とどう向き合いましたか?
被災地慰問のかたちで、監督とも関わりがあるような多くの芸能人がメディアでも報道されましたが…。

ガキ以上、愚連隊未満。 ガキ以上、愚連隊未満。

井筒監督、かく綴りき。
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震災直後は、チャリティーとか募金活動とか言って、自分の名前を売りたがるような連中もいたんじゃない? 「震災のすぐ後に、現地で歌とか唄ってる場合じゃないだろ!」とか思ったりもしたよ。そんなもんでさ、人間は励まされんでしょう? 週刊誌とか月刊誌とかサイトとかの、僕のいろんな連載で震災当初に書きましたよ。「映画であれ、音楽であれ、“芸術”にできるようなことは今は皆無なんだよ」と。「できることは何一つないんだ」と。 そりゃそうだよね…たとえば、震災の被害を免れたご立派なシネコンの中で「トランスフォーマー」をやってようが「ハリー・ポッター」をやってようが、誰もそんなの観に行く気しないでしょ。こういうときに、映画なんて何の意味もなく、何の手助けにもならないんですよ。 芸術活動や芸術家ってのは、そもそも社会の事象を照らし出したり、批判したりするもんだから、社会自体を傍観しているだけなんですね。「傍観」なんて言うと、言葉的には逃げてるみたいだけど、実は「まじかで観察する」ということだから。その傍観者である芸術家が、やれ被災地に乗り込んでいって、何か一緒にしましょうとか、僕の歌を聴いてくださいとか、できるわけないですよ。 知り合いの大友康平さんが、どこかの新聞に書いてたな。あの人、故郷は宮城で、「いま僕は歌っている場合じゃないと思うんだ」って。「今、歌うことが人間の救いになるのか?励ましになるのか?」なんてことは軽々しく思えないし考えられない、と。そのとおりだと思ったね。


震災が起こった3月は、井筒監督の最近作「ヒーローショー」のDVDがリリースされて4ヵ月ほど経ったときでした。井筒監督の次の映画創りは、当時どういう状況だったのですか?

準備に取り掛かってました。制作のフォーマットみたいなものが固まりつつあった時期でしたね。映画創りのために、そろそろパートナー探しをしなきゃっていう時で。「A社とB社を引き合わせて、どうこう…」ってね。僕自身は、これだけなんだかんだ長くやってたら、半分プロデューサーみたいなもんですから、「映画監督でございます」なんて姿勢じゃなく、プロデューサー的な仕事もしなきゃならない。震災が起きたときは、そういう状況。 撮影が遅れるようなダイレクトな影響はなかったけど、当然、仕事は停滞したよね。1ヵ月か1ヵ月半かはなおざりになった。「早めにキャスティング出しをしていこうよ」とか、みんなで言ってたんだけど、そういうのが遅れちゃって…いまは、内容はまだ秘密だけど、再稼働、動き出しました。

ヒーローショー

ヒーローショー

製作年度:2010年
上映時間:134分
監督:井筒和幸
音楽:藤野浩一
脚本:吉田康弘 、羽原大介 、井筒和幸
出演:後藤淳平/ジャルジャル(石川勇気)、福徳秀介/ジャルジャル(鈴木ユウキ)、ちすん(あさみ)、 米原幸佑(勉)、桜木涼介(剛志)、林剛史(拓也)、阿部亮平(鬼丸)


○ヒーローショー ○DVD発売中 ○価格¥3,990(税込) ○発売元:よしもとアール・アンド・シー/角川映画
©2010「ヒーローショー」製作委員会
ヒーローショー

1952年奈良県生まれ。75年、映画監督としてデビュー。81年「ガキ帝国」で日本映画監督協会新人奨励賞受賞。以降、「二代目はクリスチャン」(85年)、「宇宙の法則」(90年)、「岸和田少年愚連隊」(96年)、「のど自慢」(98年)、「ゲロッパ!」(03年)、「パッチギ!」(04年)、「ヒーローショー」(10年)…と数々の賞を受けたヒット作・話題作をコンスタントに世に送り出している。テレビ、ラジオのコメンテーターとしても多数の番組に出演中。「ガキ以上、愚連隊未満。」(ダイヤモンド社)ほか、著者多数。



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